震災後、石塚さんの絵はさらに変化します。
覆るそれまでの価値観や固定概念、絵を描く事への自答…。
そんな折、東京国立博物館で国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図」を目にします。
突き動かされる感覚を覚えた、と石塚さんは当時を振り返ります。死者を極楽
に導く弥陀如来の来迎のイメージとして作品に反映されたのです。
それまで描いてきた様々なスタイルが融合された、石塚さんの近年の作品を
三点ご紹介します。

「夜」

油絵 2011年 65X91cm

 

 

 

※クリックで大きな画像が開きます

「夜」

油絵 2012年  60X178cm

 

 

「彼方」

油絵 2013年 72.5X91cm


 

芸術の匠 石塚雅子さんから、ものづくりの匠へのメッセージ

最後に、石塚さんから頂いた
製造業の匠たちへのメッセージをご紹介いたします。

私の曽祖父はべっ甲細工の職人です。江戸で修行をし、故郷の信州で仕事をしました。子供の頃、毎朝髪を結う祖母の脇に座り、飴色に光るべっ甲細工の櫛を眺めるのが好きでした。明治生まれの祖母は生涯着物で過ごし、そんな家で古いものに囲まれ育ったため、私は自然に伝統的なものを好きになりました。父は書、妹はパン職人、私は絵描きとなり、曽祖父の匠の血は形を変え受け継がれています。
 絵画は古い様式す。その表現は紀元前から変わりません。おそらく未来に渡り同じ形で存在し続けることでしょう。人類が火を持った時から、脈々と繋がってきた真摯な仕事の一つ一つが、世界を輝かせてきました。私は手業を信じています。小さな人間の手が奇跡のように偉大なものを生み出します。匠の技に出合うたび、大いなる励ましを受けます。私自身もそういう仕事を目指し、日々絵を描き続けています。
 現在の日本の加速的変化は驚くばかりです。前のめりの目的を忘れた変化が果たして発展なのか、私は甚だ疑問に感じます。それは、決してほんとうの幸いに結びつくことはありません。世界と自然に感謝と畏怖を抱き、人間の感覚を根底にしながら、それを超えたものに目を向けられるかどうかが、今、問われているのではないでしょうか。
 願わくは、日本の製造業の匠の技がさらに花開かんことを。

石塚作品を時代を追って辿った時、抽象から具象絵画へと、美術史を逆戻りして
いるような遍歴が見られます。 そして今、ひと廻りして成熟しつつある世界。
作品群自体が渦を巻き、繰り返しながら広がり続ける…それが石塚アートの
醍醐味なのかもしれません。
今後もどのような作品を発表されるのか、楽しみです。

本特集では3回に渡って石塚雅子さんをご紹介しました。
いかがでしたでしょうか?

2014年12月都美セレクション展の写真がHPに掲載されました。
是非ご覧ください。
http://www.ishizukamasako.com/exhibition.php?lang=jp

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